谷村新司 堀内孝雄 矢沢透によるアリスのマスターサウンドが
マスタリングエンジニア界の両雄によって、今、蘇る。
待望の「アリス」ベスト盤の誕生です。
このたびステレオサウンドでは、全収録曲をマスターテープから新たに製作したアリスのアナログレコードを、皆
様にお届けできる運びとなりました。
選曲と構成は、ステレオサウンドが本格オーディオシステムで聴きたいアリスの名曲10曲です。
アリスのアナログレコードは、ヒット曲のレコーディングを数多く手掛けてきた株式会社ミキサーズラボの名エン
ジニア三浦瑞生氏とアナログ・カッティング界の名匠、北村勝敏氏の両雄によって製作されました。
今回のプロジェクトにおいて、カッティングマスターのマスタリングを担当した三浦氏は、これまで多くの名アー
ティストと音楽制作を共にしてきた中で、谷村新司、アリスの録音制作に携わり、ステレオサウンドが発売した谷村
新司SACD/CD盤の製作においてもマスタリングを手掛けたエンジニアです。
一方、ラッカー原盤のカッティングを担当した北村氏は、谷村新司、堀内孝雄のソロ作品をカッティングしたエン
ジニアとして知られています。
東京・西麻布にあるLABrecordersスタジオにおいて三浦氏がマスタリングしたカッティングマスターは、東京・
南青山にあるワーナーミュージック・マスタリングスタジオのカッティングルームに移されました。
北村エンジニアの手にわたったカッティングマスターは、ノイマンのアナログコンソールでカッティングのための
最後の微調整が施され、ノイマンVMS80カッティングレース搭載のSX74カッターヘッドで、現代にアリスを蘇らせ
る音溝がラッカー盤に刻み込まれました。
三浦瑞生氏、北村勝敏氏の両雄が惜しみなく腕を揮い合い、作り上げた、ファースト・メタルマスターによるダイ
レクトプレス盤で、アリス作品に込められた情感・情景を存分にお楽しみください。
収録曲
[Side A]
1. チャンピオン 1978年録音
2. ジョニーの子守唄 1978年録音
3. 冬の稲妻 1977年録音
4. 狂った果実 1980年録音
5. さらば青春の時 1977年録音
[Side B]
1. 今はもうだれも 1975年録音
2. 帰らざる日々 1976年録音
3. 遠くで汽笛を聞きながら 1976年録音
4. 秋止符 1979年録音
5. 涙の誓い 1978年録音
マスタリング・エンジニア:三浦瑞生(ミキサーズラボ)
カッティング・エンジニア:北村勝敏(ミキサーズラボ)
マスターテープのサウンドにもっとも近い音で甦る<真実>のアリス
昨年ステレオサウンド社から発売された谷村新司の初めてのSACD/CDハイブリッド盤の音のよさには心底驚かされた。これは2017年に発売されてすでに完売となっているLP『ステレオサウンド アナログレコードコレクション 谷村新司』の全8曲に新たにソロの楽曲を3曲、アリスの楽曲を5曲追加した全16曲のオールタイムベスト的な編集盤で、マスタリングはアリス時代から谷村の録音制作に携わってきたミキサーズ・ラボの三浦瑞生氏が担当。
オリジナルマスターからSACD層用とCD層用それぞれに個別のマスタリングを行ない、「昴」「いい日旅立ち」「サライ」といった誰もが知る名曲を考えられる最高の状態でパッケージングしたものだ。谷村新司という歌手/ソングライターの魅力はもちろんのこと、これまであまり注目されることがなかったプロダクションの質の高さをも浮き彫りにしたという点で、他に類を見ない画期的な一枚だった。
こうなると当然のように「アリスの単体ベストも聴きたい」という声が聞こえてくるわけで、その少なからぬリクエストに応えたのがここで紹介するLP『ステレオサウンド アナログレコードコレクション アリス』だ。2009年に再始動して以降、パーマネントなグループとして現在も精力的に活動を続けるアリスだが、ここに収められた10曲は1981年に活動休止するまでのいわば〈第一期〉に残された楽曲群。マスタリングはSACD/CD『谷村新司』に引き続き、三浦瑞生氏が担当している。
録音年がもっとも古いのは1975年録音のB①「今はもうだれも」で、もっとも新しいのは1980年録音のA④「狂った果実」。マスターテープは、Uマチック・デジタルを使用した「狂った果実」以外はすべてアナログである。アナログマスターはスチューダーA80マスターレコーダーで再生され、Uマチック・デジタルマスターはソニーPCM1630+DMR40000で再生後、プリズムサウンドADA8XRでアナログ変換されている。これらを三浦氏が自身のチョイスによるヴィンテージ機器を通して1曲ごとに調整。マージングテクノロジーズのHapiでデジタル化したのち、同社ピラミックスのDAW(デジタル編集機)に取り込んでいる。
カッティングマスターにはPCM384kHz/32bitというフォーマットが採用された。DSDを含むあらゆるフォーマットを比較試聴し、三浦氏が「アリスのマスターテープが持つサウンドの表現にもっとも近い」と判断したものだとか。このマスターが東京・南青山のワーナーミュージック・マスタリング内カッティングルームに持ち込まれ、カッティング・エンジニアの北村勝敏氏がバランスを最終調整。その音源がノイマンのカッティングマシンVMS80+カッターヘッドSX74によってラッカー盤に刻み込まれたというわけだ。
こうした過程を経て完成した『ステレオサウンド アナログレコードコレクション アリス』が、いま手もとにある。自宅のアナログプレーヤー、トーレンスTD147ジュビリー・エディションに盤をのせ、ゴールドリングのMMカートリッジ1006でトレースを始めると、A①「チャンピオン」の第一音でいきなり鳥肌。アコースティックギターの低音弦の力強く振幅する様子がくっきりと、視覚的なイメージを伴なって聴こえてくる。サイモン&ガーファンクル「ボクサー」の翻案と思しき楽曲の世界観を歌う、谷村新司の淀みない発音のよさが際立つ。谷村に比べるとより湿り気のある堀内孝雄のヴォーカルは、現行のベスト盤CDなどで聴くとくぐもった感じに聴こえることが少なくないのだが、ここでは谷村との個性の違いがしっかり描き分けられ、2人のシンガー・ソングライターがイーブンな関係で共存するこのトリオの成り立ちを改めて思い出させてくれる。
B①「今はもうだれも」は、フォークグループのウッディ・ウーが1969年にリリースしたシングルのカヴァー。編曲としてドラムの矢沢透の名前が単独クレジットされているだけあって、この曲はドラム、とりわけタムのヒットが強い印象を残す。そして歌い出し直前のカラッと乾燥したタムの響きが、このLPではよりいっそう気持ちよく感じられる。谷村&堀内によるハーモニーの美しさと、リズム楽器としてのアコースティックギターの小気味よさも聴きものだ。
堀内孝雄の作曲によるB③「遠くで汽笛を聞きながら」は、矢島賢によるリードギターやゴスペル風のコーラスが重なる、アリス版「レット・イット・ビー」的な名曲。腰の据わったドラミングとチェンバロのような軽やかさを持つピアノ、随所で弾力のあるフレーズを聴かせるベースなどが分離感よく配置され、その前にいつになくエモーショナルな堀内のヴォーカルが立体的に張り出してくる。個人的には本盤で一番に推したい楽曲だ。
ここに収録された楽曲のうち、先のSACD/CDハイブリッド盤『谷村新司』にも収録されている5曲を自宅のSACD/CDプレーヤー、ソニーSCD1で再生して改めてLPと聴き比べてみた。やはりSACD層は最初の印象通り、静まり返った水面に波紋がひとつふたつと落ちる瞬間を目にしているような、神秘的と言っても大袈裟ではないほどのクリアネスを感じる。LPでは音像により陰影感が加わり、谷村&堀内のヴォーカリストとしての個性が際立つとともに、演奏の鮮度と熱量が数段上がったように聴こえるのだ。
このLPは、しみじみと青春時代を懐かしむような聴きかたをするだけではもったいない。誰も聴いたことがなかった真実のアリスを伝える〈新譜〉として、谷村新司のSACD/CD同様、ファンのみならず幅広く聴いてほしい。
【必ずお読みください!】
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